社長挨拶
君は舟なり、人は水なり
有限会社中島電建
代表取締役社長中島 祐貴
激動の創業期を超えて
31歳の時に、私は父から20年以上続く電気工事会社を引き継ぎましたが、19歳で入社した当時、会社には3人しか従業員がいませんでした。
私が使っていた作業車には、壊れた工具か、劣化した工具しかなく、箒と塵取りすら有りませんでした。
何もかもが初めての経験で、不足している道具は他の業者や大工さんから借りるしかないと思っていました。
その為、不快な顔をされた事を今でも鮮明に覚えています。
創業期だった為、仕事を増やさなければならないというプレッシャーの下、少ない人数で多くの現場をこなしていました。当然ながら、各工程に携わる業者や監督をお待たせする事も多く、クレームが絶えず、現場毎に叱られていました。しかし、笑顔を絶やさない事を決め、従業員達と協力し現場を何とか纏めようと、毎日朝から晩まで休む事なく働いていました。
初めの1、2年間は何も考えずに我武者羅に働いていましたが、徐々にこの状況に危機感を抱き、改善しなければ会社に未来はないと考え、改善に取り組む事を決意しました。
まず重要視したのは、約束を守る事でした。工程通りに作業を進め、期日を必ず守るようにしました。簡単な事ですが、当時はそのような当たり前の事すら出来ていなかった為、まずは、「当たり前の事を当たり前にやる事」を徹底しました。
この事を実現する為に、スケジュール管理と現場で必要な優れた道具の整備に焦点を当てました。スケジュール管理アプリを導入した事で、各工程で必要な物を予め用意出来るようになり、忙しい時期を事前に予測出来るようになった為、手伝いの業者を効果的に手配出来るようになりました。
同様に、手で木を100本切るのと、充電式の丸鋸を使って100本切るのとでは、どちらがより正確で時間短縮になるかを明確にし、作業時間を最小限に抑える事を実現しました。
一度ついたイメージを塗り替える事は非常に困難で時間が掛かります。
しかし、「当たり前の事を当たり前にやる事」を徹底した事で、段々と現場の評価も向上していきました。
現場の評価が向上すると、周囲も協力的になる為、作業がし易くなり、更にプラスの効果が継続的に現れました。
次の段階では、人材育成に力を入れ、外国人の雇用や若手の採用などを行いました。しかし、休暇の問題や労働環境の課題により、状況は安定しませんでした。
ある時、最大の問題は、会社を良くしなければならないという責任を従業員に押し付けていた自分自身にあると気付きました。
「君は舟なり、人は水なり」とは、従業員や部下の事を良く考えた経営とマネージメントを行えば、従業員や部下は静かに支えてくれるが、自分本位で悪い経営を行えば、波風を立て舟は簡単にひっくり返されてしまうという事を意味する言葉です。
会社は、従業員がいてこそ存在する物で有り、自分を含めた従業員達が、気持ち良く仕事が出来、人生を豊かにする事を考えながら経営する事が重要だと理解しました。
また、従業員の言いなりにならず、正しい考え方を持ち、時には荒波が来ても乗り越える力量も必要だと認識しました。
この事を受けて、私はすぐに自分の考えを改め、これまでの態度や行動に対して謝罪し、改善に取り組み始めました。
会社の評価は、すぐには変わらない事を理解していた為、従業員が抱えている課題や不満、やりたい事などを共有し、即座に実行出来る内容の場合は、積極的に実践しました。
その結果、集団離職を回避し、入社当初3人だった従業員は、私が社長に就任した時には、12人まで増えました。
今後もこの考え方を変えず、日々努力して、従業員と協力業者がいるからこそ、自分と会社が存在する事を常に認識し、これまでの経験を通じて、従業員やその家族がこの会社で働いて良かったと感じる企業と経営者に成長していくつもりです。
将来のビジョン
建設業界全体での技能者の減少と高齢化が急速に進んでいます。この現象は、日本全体の人口減少と高齢化も一因ですが、職人の数の減少に関しては、ローコストとハイクオリティの要求が職人に求められた結果だと考えられます。
市場の激しい競争の中で、ローコストとハイクオリティが当たり前になり、様々な物価が上昇する中、仕事を引き受けている下請けの職人達は価格転嫁が難しく、生活費を確保するだけで、次世代を育てる余裕がない状況が多いと聞きます。
原価が上昇する中、休みを削って働き、多くの現場をこなさなければならないという考えも広がっています。週休2日が当たり前の社会である中、建設業が祝日や土曜日を休む事が難しい現状は物語っています。
将来的には、この問題が深刻化し、日本から職人が減少する可能性があります。実際に職人が不足すると、住宅供給の遅れだけでなく、事故や災害への対応が遅れ、被害が拡大する可能性があります。若い人達が職人になったとしても、経験と技術力のある熟練職人がいないと、只の若者の集団になってしまうでしょう。
若い人達に職人になってもらう為には、熟練の職人が長寿命で働けるようにし、その技術を次の世代に受け継いでいく為には、労働環境と賃金の問題を解決する必要が有ります。
中長期的には、経営者の高齢化も進行しており、事業の譲り受けや買収なども活用し、従業員や協力業者を若い力と新しい発想で活性化させ、古い考え方(賃金体制、休み方など)を変革していく事が求められます。
私たちの世代で、出来るだけ多くの若く有能な職人を育成し、日本の建設業界の衰退を食い止められる経営者になりたいと考えています。